院長コラム
糖尿病と便秘― 見過ごされがちな腸のサイン ―
糖尿病合併症は「し・め・じ」でしたし「神経障害」め「眼症」じ「腎機能低下」が真っ先に思い浮かぶかもしれません。前回コラムでご紹介したように自律神経障害としての、便秘も糖尿病に関連する大切な合併症のひとつです。
なぜ糖尿病で便秘が起こりやすいの?
- 自律神経の障害
- 高血糖状態が長く続くと腸をコントロールする自律神経が傷つき、腸ぜん動が弱くなります。
- その結果、便がスムーズに進まず、便秘がちになります。
- 高血糖による水分不足
- 高血糖状態や治療薬の影響で、尿量が増加し、相対的に体内水分量失われやすくなります。
- 水分が少ないと便が硬くなり、排便しにくくなります。
- 食生活の影響
- 糖尿病に対する食事制限で、食物繊維の摂取が不足することがあります。
- 食物繊維不足は便秘の要因になり得ます。
- 薬剤副作用の可能性
- 糖尿病治療薬の中には便秘の副作用が起こるものがあり、漫然と投薬されつづけていると気が付かないことがあります。
便秘はただの不快症状ではない、腸内細菌と代謝の関わり
腸内細菌は、食物繊維を発酵させて「短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)」を作ります。
最近CMでもおなじみの「タンサ(短鎖脂肪酸)」には次のような働きがあります。
1.腸の蠕動運動を整えて便秘を改善
2.腸管からホルモン(GLP-1など)を分泌させ、インスリン分泌を助ける
3.炎症を抑えてインスリン抵抗性を軽減
腸内細菌のバランスが良いと、便通だけでなく血糖コントロールにもプラスになるのです。
便秘と腸内環境の乱れ
便秘が続くと、腸内で悪玉菌が増え、炎症関連物質が作られやすくなります。
これが血液を介して全身に作用して、慢性的な炎症を起こします。慢性炎症の結果出されるシグナル(サイトカイン)インスリン抵抗性を増悪させて、結果として血糖コントロールが悪くなることが動物実験レベルでは報告されています。実際に、慢性便秘の人ではインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームのリスクが高いという疫学研究もあります。
まとめ
糖尿病と便秘は一見関係なさそうですが、脱水・食生活・薬剤による副作用に加えて、合併症としての自律神経障害の症状かもしれません。
便秘も血糖と同じように、日々の生活と医師への相談でしっかりコントロールすることが大切です。