院長コラム

抗生物質が招く様々な心身の不調2

腸内細菌叢と消化管の安定性

私たちの腸の中には、100兆個を超える細菌がすみついています。これらは「腸内細菌叢(マイクロバイオータ)」と呼ばれ、体にとって大切なパートナーです。

腸内細菌は大きく分けると、
・健康に良い働きをする「善玉菌」
・炎症や不調を招きやすい「悪玉菌」
・状況によってどちらにも傾く「日和見菌」
に分けられます。これらのバランスが取れているとき、腸は安定して働きます。

ところが抗菌薬投与などで一旦バランスが崩れると、腸は敏感になります。
善玉菌が減ると、短鎖脂肪酸と呼ばれる消化管を守る物質が減り、腸のバリア機能が弱まります。
結果、わずかな刺激でも腹痛、下痢、便秘を引き起こしやすくなるのです。

過敏性腸症候群(IBS)の患者さんでは、腸内細菌の多様性が減り、特定の菌が優位になっていることが報告されています。
つまり腸内環境の乱れが、IBSの「土台」を作っている可能性があるのです。

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸内細菌は神経伝達物質の合成に関わり、脳と腸は迷走神経を介してつながっています。
迷走神経が乱れると、気分の落ち込みやストレス耐性にも影響が出ることがわかってきました。

腸内細菌叢は、消化管の安定性だけでなく、心身全体の健康を支える存在です。
抗生物質の乱用で一旦腸内のバランスが崩れると、I慢性的な消化管トラブル、気分の落ち込み、ストレス耐性低下リスクまで高まります。

必要性が少ない状況で、安易な抗生剤投与が招く様々な不調を知っていると・・・安易に抗生物質に手を伸ばすことがいかにリスクが高い行為かが理解できると思います。