院長コラム
ウイルス感染流行期コラム1 なぜヘルペスは「入口」に出やすいのか?
私たちがよく知る口唇ヘルペスや性器ヘルペスは、決まって“体の入り口”に出てきます。
唇、鼻の下、外陰部、肛門周囲…。なぜわざわざそこに現れるのでしょうか?
粘膜関連リンパ組織(MALT)の窓口だから
口や鼻、性器、肛門といった部位は、食べ物や空気、微生物が日々出入りする“通関ゲート”です。ここには抗原を捕まえて免疫応答を誘導する MALT(粘膜関連リンパ組織) が配置されています。
つまり「敵も味方も必ず通る場所」=ウイルスにとって潜伏・再活性化しやすい足場なのです。
神経の末端が集中しているから
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、初感染後に 神経節に潜伏します。再活性化すると、末梢神経を通って皮膚・粘膜に降りてきます。
口唇や性器の「入口部」は末梢神経が網の目のように走っており、ウイルスが表に出るには最短ルート。だから繰り返し同じ場所に再発するのです。
局所免疫が寛容であるから
入口の粘膜は、食物や常在菌をいちいち攻撃しないよう免疫が寛容に調整されています。
つまり免疫の監視は常在菌や食物と敵を見分けるために少し緩めにされています。
この隙間をヘルペスが突き、再発の温床になります。
炎症を起こしても致命的になりにくい部位だから
ウイルスにとって大切なのは宿主に大きなダメージを与えずに増殖することです。
入口の粘膜は多少炎症や潰瘍を起こしても命に関わりにくく、唾液や接触で他者に伝播しやすい。
まさにウイルスにとって生存戦略として都合の良い舞台なのです。
ヘルペスが「入口」に出やすく、再発を繰り返すことができるのは、単なる偶然ではなく、ウイルスが進化の過程で選び抜いた舞台装置なのです。