院長コラム

聴力検査は正常でも聞き取りづらい ・・・隠れ難聴かも

「聴力検査をしたけど、正常と言われた。でも最近会話が聞き取りにくい」「特に雑音の中で言葉がぼやける」そんな経験はありませんか?一般的な聴力検査(純音聴力検査)では見抜けない聴こえの質の低下を「隠れ難聴(hidden hearing loss)」と呼びます。

聴こえているのに、聞き取れない”の正体

通常の聴力検査は、静かな環境で「音の大きさ(デシベル)」に反応できるかを調べるもの。
つまり、音を感じる能力しか評価していません。
ところが、実際の生活で必要なのは「言葉を聞き分ける能力」つまり音を処理する脳の働きです。

隠れ難聴では、内耳の有毛細胞(音を感じるセンサー)は保たれているものの、有毛細胞と聴神経をつなぐ神経シナプスが減少して、小さな音や会話のニュアンスを正確に伝えられない状態を指します。

隠れ難聴の症状

  • 騒がしい場所で会話が聞き取れない
  • 相手の声がこもって聞こえる
  • 聞こえているのに疲れる
  • 若い頃より人の話を「集中しないと理解できない」

隠れ難聴の主な原因

  1. 加齢性変化(シナプスの減少)
     30代から進行する聴神経連結の劣化。聴力低下はないものの、音の解像度が落ちていきます。
  2. 長年の騒音曝露
     イヤホン、カラオケ、交通音などの刺激が、聴神経を徐々に弱らせます。
  3. ストレスや血流低下
     内耳は非常に細い血管で支えられており、血流障害で神経伝達が鈍ることがあります。

確認するには? ― “言葉の聞き取りテスト”

もし聴力検査は正常なのに聞きづらいと感じたら、耳鼻咽喉科で語音聴力検査を受けてみましょう。

これは「ア」「カ」「サ」「タ」などの単音や言葉を聞き分ける力を調べる検査で、①聴力(音の大きさ)②語音弁別能(音の明瞭さ)両方を評価できます。語音明瞭度が70%未満であれば、隠れ難聴の可能性が高くなります。

対策

  1. 早期の補聴器・集音器の活用
     「聞こえているのに補聴器は早い」と思われがちですが、音の入力が減ると脳の“聞き取り回路”が退化してしまいます。早めの補助が、脳の聴覚野を保つトレーニングにもなります。
  2. 聴覚リハビリ(リスニングトレーニング)
     「雑音下での会話トレーニング」や「音読を聞いて復唱する」など、脳で聞き取る力を再教育するプログラムが注目されています。
  3. 静かな環境をつくる
     雑音を処理しているし続けると脳疲労が蓄積します。
     静寂時間を意識的に取り入れることが、聴覚のリセットになります。
  4. 血流改善・生活習慣の見直し
     内耳の血流を守るため、禁煙・減塩・有酸素運動を習慣化しましょう。

隠れ難聴は音を感じる力の問題ではなく、音を理解する脳の問題

聞こえているのに、聞き取れないのは老化ではなく、脳からのSOSです。
自覚症状がある方は、ぜひ一度調べてみましょう。