院長コラム
箸休めコラム 寒さからからだを守るための、サバイバル反応
深部体温を守るために体が行っている「代償反応」
人の体は、外気温が下がっても深部体温(脳や内臓の温度)をほぼ一定に保つよう精密に制御されています。寒い日に指先や足先が冷たくなったり、震えが出たりするのは、すべてこのために起こる「代償反応」です。
末梢血管収縮
最もよく知られている反応が、皮膚や四肢の血管を収縮させることです。
血流を体の中心部に集めることで、心臓・脳・腎臓といった生命維持に重要な臓器の温度低下を防ぎます。その代償として、指先や足先は冷え、痛みやしびれを感じやすくなります。
震え(シバリング)
寒さが強くなると、筋肉が無意識に細かく収縮し始めます。これが震えです。
筋肉を動かすことで熱を産生し、自ら熱を作り出す仕組みです。エネルギー消費が大きいため、長時間続くと疲労や低血糖を招くこともあります。
代謝の亢進
寒冷刺激は交感神経や甲状腺ホルモンの働きを通じて、基礎代謝を上昇させます。これにより、体内での熱産生が増えますが、同時にエネルギー消費も増えるため、寒い時期に食欲が増すのは自然な反応とも言えます。
褐色脂肪組織の活性化
近年注目されているのが、褐色脂肪組織による熱産生です。
褐色脂肪は、脂肪を燃焼させて直接熱を生み出す組織で、首や肩甲骨周囲に多く存在します。
寒冷刺激によって活性化し、震えを伴わない熱産生を担います。
呼吸・心拍数の変化
寒さは交感神経を刺激し、心拍数や血圧を上昇させる方向に働きます。これにより、中心部への血流を維持します。高血圧の人が冬場に血圧が上昇しやすい傾向があるのも納得できます。
行動による代償反応
体温調節は自律神経だけでなく、行動変容にも強く依存しています。寒いと感じて服を重ね着する、体を意識的に動かす、温かい飲み物を摂るといった行動は、脳が深部体温を守るためにおこしている重要な行動変容です。
ホルモン・免疫への影響
寒冷刺激が続くと、コルチゾールなどのストレスホルモンが増加して、免疫機構に影響を与えることがあります。これが冬場に体調を崩しやすい一因とも考えられています。
代償反応は正常だが、身体の負担にもなる
これらの反応はすべて、深部体温を守るための正常な生理反応です。
しかしながら、高齢者、痩せている人、心血管疾患や自律神経障害を持つ人では、代償反応が過剰になったり、うまく働かなかったりすることがあります。
寒さに対して体がどのように頑張っているのかを知ることは、適切な防寒や行動変容につながります。
冷えは症状であり、体からのサインでもあるのです